おとはさん
不動産を相続したときにおこなう相続登記は、法律上義務付けられているわけではありません(2019年12月現在)。しかし、法律上の義務ではないため相続登記がされていない不動産が増加しており、様々な問題が生じています。
そこで、相続登記を義務化する方向で法改正が進められています。この記事では、2020年以降に予定されている法改正のポイントを解説していきます。
目次
相続登記は義務じゃないの?
不動産の所有者が亡くなると、亡くなった人から相続人へと名義変更する手続が必要です。この名義変更の手続を相続登記といいます。
通常、不動産の所有者が亡くなるとその相続人が(又は、司法書士に依頼して)法務局に相続登記の申請をおこないます。しかし、相続登記は法律上の義務ではないため、不動産の所有者が亡くなっても相続登記がおこなわれず、登記記録上亡くなった人の名義のままになっているという不動産が全国各地に増加しています。
所有者不明土地
相続登記がおこなわれず、亡くなった人のままの名義になっている不動産は、所有者不明土地となって災害復旧、道路整備、土地の有効活用などを進める際の障害になっています。
東日本大震災でも、被災地域に所有者不明土地が多くあったことで復興事業の妨げになっていました。
おとはさん
こういった所有者不明土地の問題に対し、法務省が中心となって民法と不動産登記法を改正する方向(2020年以降)で準備が進められています。
法改正の方向性・3つのポイント
「所在者不明土地を減らす」という方向で法改正が検討されています。
相続登記を義務化(ポイント1)して、相続人同士での話し合いに期間制限を設けたり(ポイント2)、一定の要件を満たすとき土地所有権の放棄を認める(ポイント3)ことで、登記記録上所有者が誰なのかを明確にしたり、所有権の帰属を明確にしたりします。
ポイント1 相続登記の義務化
これまで相続登記は法律上義務ではありませんでした。それが相続登記がされていない不動産を生み出す原因の一つでした。
法改正では相続登記を義務化する方向で検討されています。そして相続登記の義務化の実行性を確保するため、登記を怠ると過料を科すという案も出ています。
過料(かりょう)
国や地方公共団体などが、行政上の義務違反者に金銭の支払いを求める制裁。「あやまちりょう」とよむこともある。
ポイント2 話し合いの期間制限
相続登記を促すための方策の一つとして、遺産分割協議(相続人同士での話し合い)や家庭裁判所への申し立てに一定の期限を設定して、その期限を経過すると法律に従って権利関係が決まるようにすることが検討されています。
おとはさん
話し合いの期間制限が導入されると、一定期間経過後は法律上権利が決まり、相続登記ができるようになることが期待されます。
おとはさん
ポイント3 土地所有権の放棄
「権利の帰属に争いがない」「管理が容易である」などの要件を満たす場合、土地の所有権を放棄できる方向で法改正が検討されています。
今回の改正で検討されている「土地所有権の放棄」は、相続財産全てを相続できなくなるのではなく、その土地だけを放棄できるようにする方向で検討されているようです。
おとはさん
自分自身も高齢になってきて、遠方にある実家を相続したら管理はどうしようかと悩んでいたけど、法改正がされると土地所有権だけを放棄することも可能になるかもしれないんだね。
全ての財産を放棄するわけにはいかないから助かるよ。
法改正までのスケジュール
相続登記の義務化がスタートするのは2020年の秋以降になります。
2020年1月上旬予定
2020年秋の臨時国会(予定)
2020年秋の臨時国会 (予定)
相続登記の義務化等がスタート
相続登記していない土地ってどれくらいあるの?
2016年時点で全国で約410万ヘクタール(統計的推計値)が相続登記がされていない土地といわれています。このまま進むと、2040年には約720万ヘクタールが相続登記がされていない土地になる見込みです。(一般財団法人国土計画協会)
410万ヘクタールと聞いてもピンと来ませんね。
九州地方が約367万ヘクタール、オランダの国土が約415万ヘクタールですから、とても広大な土地の相続登記が放置されているということですね。
日本の面積は約3780万ヘクタールなので、日本の約9分の1の土地は相続登記がそのままにされている土地ということです。
東京ドームに換算すると、約88万個分です。
おとはさん
- 関東地方の面積・・・324万ヘクタール
- 九州地方の面積・・・367万ヘクタール
- 相続登記がされていない土地・・・410万ヘクタール(2016年推計)
- オランダの国土・・・415万ヘクタール
2040年には約720万ヘクタールになる試算です。
日本の約5分の1の土地が相続登記がされないという状態になるかもしれないということです。
おとはさん
- 東北地方の面積・・・669万ヘクタール
- 相続登記がされていない土地(2040年試算)・・・720万ヘクタール
そもそも相続登記しないでおくと、どんな問題がある?
相続登記をしていない土地が増えると、所有者不明土地となり、災害復旧、道路整備、土地の有効活用などを進める際の障害になります。
また、相続登記しないでおくことは、不動産を相続した相続人にもデメリットがあります。
デメリット1 売却できない
相続した不動産は、相続登記を行っておかないと売却することができません。
デメリット2 抵当権設定できない=銀行ローンが組めない
相続した不動産は、相続登記を行っておかないと抵当権を設定することができないため、銀行のローンはまず組むことができません。銀行のリフォームローンを組んで古い家をバリアフリー化したいというときも、相続登記をおこなってからということになります。
デメリット3 相続人リスク(高齢化)
相続登記をせずに時間が経ち、相続人が高齢化して認知症などになると、簡単に遺産分割協議ができなくなり相続登記自体に大変な手間がかかることがあります。
デメリット4 相続人リスク(権利関係複雑化)
相続登記をせずに時間が経ち相続人が亡くなってしまうと、相続人の相続人にまで相続登記に関与してもらう必要が生じます。過去には、相続登記をせず時間が経ち、本来数名だった相続人が数十人に増えてしまい、お互い面識もなく手続がとても大変になったという例もあります。
デメリット5 必要書類が収集困難に
相続登記をせずに時間が経つと、相続登記の申請の際に必要な書類を集められなくなる可能性があります。
デメリット6 差押の問題
相続登記をせずに放置していると、相続人の債権者が法定相続による相続登記を行い、債務者(相続人)の持分を差し押さえてしまう可能性があります。
おとはさん
まとめ
相続登記は義務ではありませんが、放置していると様々な問題やデメリットが生じます。
相続登記が義務化されるのはまだ少し先ですが、「相続したけど、相続登記がまだだ」という不動産をお持ちの方は、早めに手続しておきましょう。
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おとはさん