ただし、相続登記を放っておくとデメリットが生じることがあります。
相続登記を放置したときに生じるデメリットについて解説します。
おとはさん
目次
相続登記の期限
相続登記に期限はありません。
相続登記には法律上決められた期限がありません。
不動産の所有者が亡くなって以降であれば、相続登記が可能です。
相続登記をおこなわず放置していると、デメリットが発生する可能性があります。
不動産の所有者が元気なうちに不動産の名義を変える(不動産を譲渡する)場合は、相続登記ではなく贈与の登記や売買の登記となります。
相続登記を放置すると発生するデメリット
デメリット1 売却できない
相続した不動産は、相続登記を行っておかないと売却することができません。
- 実家を売って、そのお金で高齢になった母を施設に入れてあげたい
- 不動産の相場が上がってきているので、空き家になっている実家を売りたい
- 「買いたい」と言ってくれている人がいるので、使ってない土地を売りたい
相続登記が終わっていないとすぐに売ることができず、相続登記が終わるまでの数週間から数か月待つことになります。
おとはさん
デメリット2 抵当権設定できない=銀行ローンが組めない
相続した不動産は、相続登記を行っておかないと抵当権を設定することができません。
- 銀行でリフォームローンを組んで、高齢の母が快適なようにリフォームしてあげたい
- 家が古くなって雨漏りしだしたので、リフォームローンを組んで修理したい
- 事業を始めるので、銀行から融資を受けたい
相続登記が終わっていないと、銀行は不動産に抵当権を設定することができず、不動産を担保にした融資をしてくれません。相続登記が終わるまで、数週間から数か月融資を待たなければならなくなります。また、お金が必要で銀行から借り入れをしようとしているタイミングで、逆に相続登記費用という出費が発生してしまいます。
おとはさん
デメリット3 相続人リスク(高齢化)
相続登記をせずに時間が経ち、相続人が高齢化して認知症などになると、簡単に遺産分割協議ができなくなり相続登記自体に大変な手間がかかることがあります。
認知症などで判断能力が低下した相続人は、遺産分割協議をすることができません。その場合、裁判所に判断能力の低下した相続人の成年後見人を選任してもらい、その成年後見人に遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
裁判所に成年後見人を選んでもらう手続は、医師に診断書を書いてもらったりと言った必要な書類集めからスタートし、数か月の時間がかかり、数万円から数十万円の費用が必要になります。
成年後見人は判断能力の低下した人の財産全般を管理します(相続の手続に限らず、財産全般を管理します)。また、相続手続が終わったら成年後見人の仕事が終わりというわけではなく、被後見人(ここでは遺産分割協議に参加するはずだった、判断能力が低下した相続人)が亡くなるまで続きます。
成年後見人は親族が選ばれることもありますし、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選ばれることもあります。相続手続に関係する親族が成年後見人に選ばれた場合、さらにその成年後見人に代わって遺産分割協議に参加する人を(特別代理人)を裁判所から選んでもらう必要があります。弁護士や司法書士などの専門職が成年後見人に選ばれた場合、専門職後見人に財産を管理し続けてもらうことになり、裁判所が設定した報酬を専門職後見人に支払う必要が生じます。被後見人が亡くなるまで、その人の財産状況に合わせて裁判所が設定した金額(一般的に年間数十万円~)を毎年支払い続けます。
成年後見人は、被後見人に代わって被後見人のために遺産分割協議に参加しますから、最低でも被後見人の法定相続分は確保します。認知症になる前に遺産分割協議をしておけば、誰かひとりが全部相続するということも可能ですが、成年後見人が選任されるとそれも難しくなります。
おとはさん
デメリット4 相続人リスク(権利関係複雑化)
相続登記をせずに時間が経ち相続人が亡くなってしまうと、相続人の相続人にまで相続登記に関与してもらう必要が生じます。
例えば下の図のような場合、相続人は亡くなった不動産の登記名義人の「配偶者」と「娘さん」が相続人になります。
しかし、遺産分割協議をせずに時間が経ち娘さんが亡くなってしまった場合、相続人である娘さんの相続人に相続登記に関与してもらう必要が生じます。
おとはさん
遺産分割協議が円滑にまとまればあまり問題ではないかもしれません。しかし、娘の夫や娘の子も相続人なので、当然法定相続割合も認められていますし、手続上も印鑑証明書の提出や遺産分割協議書への署名と実印での押印に協力してもらわなければなりません。
また、さらに相続登記をせず放置して時間が経っていくと、相続人の相続人の相続人に手続に関与してもらう必要が生じたり、相続人の中で連絡が取れない疎遠な人が出てきてしまう可能性もあります。
過去には相続登記を放置しすぎて協力が必要な相続人が数十人となってしまい、とんでもない労力と時間がかかったという事例もあります。
おとはさん
デメリット5 必要書類が収集困難に
相続登記をせずに時間が経つと、相続登記の申請の際に必要な書類を集められなくなる可能性があります。
特に、住民票の除票・除籍謄本の附票・改製原戸籍の附票は保存期間が5年間と定められているので、経過後は破棄されてしまいます(市区町村の役所によっては、経過しても多少の期間は保存している場合があります)。
おとはさん
デメリット6 差押の問題
相続登記をせずに放置していると、相続人の債権者が法定相続による相続登記を行い、債務者(相続人)の持分を差し押さえてしまう可能性があります。
下の図の場合、配偶者と子が遺産分割協議を行い、遺産分割協議に基づいて相続登記をするというのが一般的な流れです。
しかし、相続登記をせずに放置していると、子の債権者が、「配偶者が2分の1・子が2分の1」という相続登記を行い、子の2分の1の部分を差し押さえるということがあります。比較的よくあるのは、子に税金の滞納があると国や県が相続登記を行い、子の持分を差し押さえるという事例です。
複合的にデメリットが顕在化
おとはさん
ケース1 実家を売ろうと思ったら・・・
離れた実家で一人で暮らしている母が、高齢で認知症になってしまった。評判のいい施設に空きが出たと聞いたので、母が一人で住んでいた家を売却して、その売却代金で施設に入ってもらおうと思ったが・・・
- 実家を売ろうと思って不動産屋さんに行ったら、登記名義が亡くなった父なので、まず相続登記をするように言われた
- 認知症の母も亡くなった父の相続人だった
- 母が認知症なので、簡単に遺産分割協議ができず、まず成年後見人の選任が必要ということになった
- 成年後見人の選任申立にお金も時間もかかる・・・
- そんなこんなをしているうちに、施設に空きがなくなってしまった・・・
ケース2 古くなった自宅をリフォームしようと思ったら・・・
祖父の代から大切に住んでいる自宅。同居している母が高齢になってきたとき、ちょうど銀行がリフォームローンの金利優遇キャンペーンを始めた。銀行でリフォームローンを組んで、古い自宅をバリアフリー対応にリフォームしてあげようと思ったら・・・
- 銀行にローン審査を申し込んだら、登記名義が亡くなった祖父になっていることを知らされた
- 相続登記をしないとローンの審査が通らないと言われた
- 当初の相続人は祖母と祖父の子5人だったが、すでに全員亡くなっているらしい
- 現在の相続人は20人に増えているらしい
- 現在の相続人の中には全く交流のない人がいる
- 現在の相続人の中には親族でも連絡の取れない人がいるらしい
- 現在の相続人の中には認知症になってしまった人がいるらしい
- 現在の相続人の中にはお金に困っているらしい人がおり、遺産分割協議に応じてくれるかどうか不安だ
- リフォームどころではなくなってしまった・・・
相続登記はいつまでにやるべきか
相続登記に法律上の期限はありません。しかし、相続登記を放置することは多くのデメリットが潜んでいます。「売る予定もないし、銀行からお金を借りる予定もないから、そのままでいいか」と放置してしまうと、さらに大きな負担となって下の世代に重くのしかかってきます。
相続登記は、気が付いたときが手続のタイミングです。早めに相続登記をしておけば、6つのデメリットを回避できます。今のうちに終わらせてしまいましょう。
おとは司法書士事務所では、日本全国の相続登記をお手伝いしております。無料見積もり実施中です。お気軽にお問い合わせください。
おとはさん